バケツに水を入れて、グルグル回しても水がこぼれない
今回は、一定数の人は子供のころやったことがあるだろうということについて考えていきます。私も小学4年ぐらいで、学校のトイレ掃除の番だったとき、やった記憶があります。今回、水がこぼれない理由を説明するのはもちろんなのですが、それだけでは微妙なのでどのぐらいで回せば水がこぼれないのかについても説明したいと思います。
なぜ水がこぼれないのか、この背景には「遠心力」というものがあります。
図1 水を入れたバケツを回す人(右腕だけ長いですがそこはスルーしてください)
ここで、バケツに入った水の質量を、バケツを回す腕の長さを、その角速度をとします。すると図1の右側のように簡略化することができます。*1(軸は、反時計周りに角速度で回転しており、バケツを回す腕を表す。)
このように一定の角速度で回転する座標系では、「遠心力」という慣性力が働くかのように扱い、その向きは中心から遠ざかる向きで、その大きさはになります。(この理由についてはあとで詳しい記事を書くつもりです。)
この重力に逆らう向きに生じる「遠心力」によって、バケツに入った水はこぼれなくなるのです。*2
では、次にどのくらいで回せば水がこぼれないのかについて考えていきたいと思います。
上の議論から考えるに、水がこぼれないときというのは、軸方向において重力と遠心力がつり合っている(=重力の軸方向の成分の大きさと遠心力の大きさが等しい)、または、重力の大きさより遠心力の大きさが大きいときです。
ここで遠心力の大きさを与える式をみるとであり、が大きくなればなるほど遠心力の大きさが大きくなることがわかります。
よって、軸方向において重力と遠心力がつり合っている状態にまで、を大きくしさえすれば、水はこぼれないのです。
軸方向において重力と遠心力がつり合っている状態を式に表すと
・・・・・・ (1.1)
です。
重力の軸方向の成分の大きさは、一定ではなく(は整数)のときに最大値をとり、その最大値はです。(なぜならでありとなるのはの時だから。)
重力の軸方向の成分の大きさが最大値をとるときの重力と遠心力のつり合いの式は
・・・・・・ (1.2)
であり、これが成り立つのであれば、回転中のほかのいかなる時でも水がこぼれないことがわかります。
(1.2)より
・・・・・・ (1.3)
となります。この結果からわかるのは、
- の値が大きければ大きいほど、角速度が小さくても水がこぼれない
- は水の質量によらない
です。後者は自分的には直感に反する気がします。(水が多いと速く回さなければならない気がしませんか?)
ではここから実際に数値を出していきましょう。
- 成人男性の腕の長さ・・・
- 成人女性の腕の長さ・・・
であるらしいので、この値を(1.3)に代入してみると
- 成人男性の場合・・・
- 成人女性の場合・・・
これだとわかりにくいので、1周回すのに何秒かで考えると
- 成人男性の場合・・・
- 成人女性の場合・・・
であることがわかりました。
ちなみに10歳(小4ぐらい)の男女だと腕の長さがぐらいなので、1周回すのに何秒かで考えると
であるので自分はそのくらいでバケツを回していたんだなと思いました。
結論
成人男性の場合は1周1.72秒以内、成人女性の場合は1周1.64秒以内、小4の場合は1周1.37秒以内で自分の好きな量の水をバケツに入れて回せば、水をこぼさずバケツを回せるでしょう。(たぶん)